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『四重人格』ツアー編成〜キーボードの謎(3)

投稿日:2012年8月4日 更新日:


 

全然脈路のないまま『四重人格』ツアー編成〜キーボードの謎(3)になってしまったが、フランク・サイムズの直近のインタビューが興味深く、オリンピックや『四重人格』の情報に富んでいるので要旨をまとめておこうと思う。

(それぞれ(1)(2)、音楽監督フランクの活躍を書いた番外編もあります)

まず、あらためてフランク・サイムズの略歴を記しておきたい。

マッカーサー将軍の司法担当官だったアメリカ人の父と元モデルの日本人の母の元に生まれたサイムズは、父と共に世界中を旅したという。
10代でロス・アンゼルスの高校に入学。
ミュージシャンとしては、ミック・ジャガー、イーグルスのドン・フェルダーとの共演があり、グラミー賞にノミネートされたこともある。

特に忘れがたいものとして、1993年にハリウッド・ボウルでポール・マッカートニー、ジョージ・ハリスン、リンゴ・スターと共演し、『ヘイ・ジュード』を歌ったことをあげている。

ザ・フーを知ったのは14歳で、日本の映画館でウッド・ストックの映画が上映されたときだ。
圧倒的なパフォーマンスと、なによりもその音楽性に、「映画の中に飛び込んでいって、ザ・フーと共演したい」と思ったそうだ。
アメリカン・スクールの仲間と「シッタールダ」というバンド名でフーの曲を演奏していたこともあった。

その後、ロジャーのバンド「 No Plan B」のギタリストとして活躍。

そして既に発表されたように、『四重人格』北米ツアーでは、音楽監督、キーボードとして、いよいよ念願のザ・フーとの共演が叶う。

『トミー』で行なったのと同様、『四重人格』でも、フランクはホルンやトランペット等の管楽器、弦楽器、キーボード、そしてバックコーラス部分を細かく分け、3ケ月かけて譜面に起こしたが、なんと『ドクター・ジミー』だけで85ページにも及ぶそうだ。

それだけに留まらず、オリンピック閉会式で演奏される「メドレー」を作るのにも協力しているとのこと。
(ここで既にマイ・ジェネレーション一曲のみ、という管理人の予想は外れたことが判明)

日本の報道で「新曲」を発表と煽っているものもあるが、インタビューでは「We’ve recorded a piece of music 」としか言及していないので、あまり期待しないほうが良いだろう。

thewho.comエディターによれば、既に出来上がった音源はびっくりするほど素晴らしいとのことだ。パフォーマンスはこれに合わせた口パクになる予定。開催国を代表するアーティストとして、閉会式をおおいに盛り上げて欲しい。

再び『四重人格』ツアーの話に戻るが、このフランクの仕事のほか、ザ・フーの『四重人格』インタビューにも少し気になる発言がある。

thewho.comビデオインタビューを「EJ」風に書き起こしてみると;

ピート(タウンゼント);
「そうですね、僕が好きなのは、ええと、・・反論ではなくて、ロジャー(ダルトリー)が言ったことを補足すると、僕にはとても簡単だということなんです・・・、僕があれを書いたときは、全部ギターで作曲したんですよ。少しキーボードでもやりましたが、・・でも全ては指先にかかっているんです。よどみなく自然にね。僕にとっては、演奏すると非常に優美な作品だと感じるんですよ、作品として、演奏するのが大好きだし、あっという間でもありますが、歌うにはかなり負担がかかる作品であることも承知しています。ボーカル的に名演の『愛の支配』のような、すぐにわかる作品だけじゃなくて、本当に、全部なんです・・・。ロジャーがある程度、ショーについて話しましたが、1973年に遡って、『四重人格』が最初に仕上がったとき、僕のフラストレーションはひとつに、あれがそのままストレートにツアーになると想像していたことなんです、必ずしもひとつのショーとしてではなく、・・でもかなり近い何かとしてね、だから僕たちにとって、・・僕にとって、「ひとつのショー」としての、あの音楽を実感するのはとても重要なことなんです。それにはものすごいものがあって、僕にとって素晴らしいものなんですよ、そしてロジャーが、これに途方もなくクリエイティヴに打ち込んだのを聞いてもらえるでしょう。そして、それは僕たちが歩み寄ることのできた数少ないもののひとつだと思うんです。僕は自分の仕事を分かっているんですよ、あれを書いたのは大昔だ・・、ロジャーが最近やっているのは実際に、よく理解してもらえるような新しいやり方を作り出し、彼曰く、時代に即したものにしているんです。ですからそれは、僕たちが一緒にやっていることを、お互いに心地よく感じる環境なんだと思うんですよ」(@2:11頃)

というように、何か大幅に、現代風に改変されているのではないか、と思える節があることだ。

『トミー』ツアーのスクリーンで、サリー・シンプソンが現代風なChav(イギリスの労働者階級の特定の若者達)に描かれていたことを思い出して欲しい。
(このスクリーンはロジャーとエセックス大学の学生達によるもので、60年代、70年代ではなく現代の若者にしたいというロジャーの希望が取り入れられ、フェイスブック上の非公開グループで議論されていた)

視覚的にモッド・カルチャーをアメリカにも分かりやすく紹介するのか、アメリカ人デザイナーが起用されるのか、色々考えられるが、ますます目が離せない展開になりそうだ。

尼崎のオフ会で少しトミー・スクリーンと日本との関わりを話したが、新しい『四重人格』の「海」はブライトンだけでなく、フランクが父と渡った日本海もイメージに取り入れられているのだろうか。

フランクは『四重人格』北米ツアーが成功すれば、ヨーロッパ、イギリス、オーストラリア、そしてアジアにツアーが広がる可能性も示唆している。
リハーサルは今秋10月からロンドンで始る。thewho.comでもその模様が伝えられることを願っている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

フランク・サイムズ、2012 年4月28日、尼崎公演で。

 

資料:sierramadre.patch.com、thewho.coビデオインタビュー

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