ザ・フー

ザ・フーとドラッグ

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日本ではあまり大麻や合成ドラッグについて、違いが論じられることはありませんが、英国ドラッグの変換史は英国音楽史にも深く関わっています。特にサイケデリックな時代の影響は大きいですよね。

映画でも、「さらば青春の光」におけるモッド・カルチャーのアンフェタミン(中枢神経への興奮作用)、「トミー」の「アシッド・クィーン」が使うアシッド(LSD、幻覚作用)、それぞれの異なる作用がうまく表現されています。

時代と共に移り変わった、これらのドラッグの蔓延と共に、ザ・フーの「無法の世界」は、60年代後半に英国で起ったアンダーグラウンド・カルチャーに関わる事件が発端となって書き上げられました。
また、ピートのコカイン中毒は、80年代にある曲にもなっています。
(各曲についてはまた改めて書こうとと思います)

一概にドラッグと一括りにするより、その副作用・効能(幻覚・不眠 etc)を知れば、その時々のザ・フーの状態も見えてくるのでは、と思い、以下にメンバーのドラッグについて列挙してみます。

・2019年5月13日、ロジャー・ダルトリーがNYで観客に止めるように言ったのは大麻

ロジャーは、「心理的」ではなく、体質的に大麻のアレルギーで、実際、公演中に煙を吸い込んでしまい、何度か楽屋で酸素吸入を行なっています。

動画は2006年、シカゴ公演で煙を吸ったロジャーが途中で酸素吸入のために楽屋へ戻り、ピートが訝りながら「マイ・ジェネレーション」を歌い、最後に「すぐ戻るから」と楽屋へ向かった時のもの。

今、話題になっている報道は、NYで娯楽用大麻の合法化についての論争があるところへ、ロジャーがかつての大麻常用者と誤解されて、「老いたロックスターが逆に観客に説教する時代」とねじ曲げられた論調が見られますが、完全に誤解です。

・65年、ロジャー・ダルトリーがトイレに流したキース・ムーンのドラッグはアンフェタミン

怒ったキースがタンバリンで殴りかかり、その結果、ロジャーはクビに。
マネージャーに頼まれ、復帰する際のロジャー側の条件は、「公演前のドラッグ禁止」
ロジャーは薬のせいで演奏がおかしくなり、音楽が損なわれるのが嫌だっただけで、個人のドラッグ嗜好に介入したことはありません。

・60年代後半、ピートがメヘル・ババの教えでやめたのはアシッド(LSD)

サイケデリックな幻覚作用を宗教上の体験にすることの危惧、67年の機上でのバッド・トリップ体験によるもの。しかしそれ以降、コカインへのめりこむようになります。

・73年、キース・ムーンが公演中に失神したのはエレファント・トランキライザー

「象用の麻酔薬」と誤訳されているものがありますが、合成ドラッグPCP(フェンサイクリディンの通称です。
サンフランシスコ公演では、倒れたキースの代わりに観客の中からドラマーを募り、挙手したスコット・ハルピンが代役を勤めました。

・78年、キースの直接の死因は、ドラッグ中毒ではなく、アルコール依存症治療薬の過剰摂取

米滞在中のドラッグ使用が体を蝕んでいたのは確かですが、それを断つためにロンドンへ戻ってきてたキースが治療していたのはアル中。薬は薬でも治療薬です。

・1982年、ピートがリハビリを行ったのはヘロイン

多幸感があるものの、依存性が高い薬物ということです。ピートがツアーや家族との確執で悩んでいた時期。周囲からピートを説得するように頼まれたロジャーが、リハビリを勧めにピートの家を訪ねた翌日、ピートは自らリハビリ施設に入りました。

・2002年にジョンが亡くなったのはコカイン

ジョンのコカイン中毒もずっと前から分かっていたにも関わらず、ロジャーが止めたことはありません。ジョンの生き方として認めていました。

「先が長くないのが分かっていたから、いつもハグで別れていた」

・ロジャー・ダルトリーのドラッグに対する見解

自分で使うことはありません。経験したのは大麻だけですが、声がかすれ、体質に合わなかったそうです。唯一やめられなかったのは睡眠薬で、一日2回の公演をこなすため。
ロジャーが合成ドラッグに手を出さなかったのは、精製した人物からその危険性を知らされていたから。

もしメンバー(キース)の死に怒りを感じたとすれば、その矛先はヘルプが足りなかった(と感じる)自分へ向かっていたかもしれませんが、ドラッグに対しては、どうでしょうか。

これに関しては、個人個人のメンバーに対する思い入れがありますから、否定も肯定もしませんが、自伝などで公になっているのは上記の通りです。

・ピートが手掛けるダブル・オー・チャリティーの目的

補足すると、当初はイギリス初の家庭内暴力被害者のための避難所を支援するために発足した慈善事業で、薬物依存者の支援はかなり後になってから。
ピートのドラッグ決別思考とは関係ありません。

リンク先の写真は、ロジャーがケニー・ジョーンズと一緒に避難所の子供たちを訪れてた際のもの。

ソース:ピート・タウンゼントやロジャー・ダルトリーの自伝・インタビューなど

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