このブログはブートレッグについて滅多に扱うことはありません。多分初めてかもしれないです。ちょっと気になることがあったので、後日の忘備録として残しておきます。
明日6月14日、「トミー」50周年を記念して、ロジャー・ダルトリーが昨年ソロでツアーしたウッドストック跡地のべセル公演を録音した「ザ・フー『トミー』オーケストラル」が発売されます。
しかし、ザ・フーの「トミー」オーケストラ化自体は今回が初めてではありません。
1972年10月、ルー・レイズナーが指揮し、ロンドン交響楽団を伴奏に起用したオーケストラ版が既に存在します。リンゴ・スター、ロッド・スチュワートをゲストに迎えた豪華版。
この録音が行われた72年12月9日ですが、なんと、昼と夜で2回の「トミー」オーケストラ公演が行われたのです。同じ会場のレインボーシアターで、それも違うゲストで。（画像参照：「レインボー・シアターで2公演開催の予定」と書かれた記事）
そのうちの、公式リリースされなかった方の公演が、長年TAKRL版と呼ばれるブートレグで出回っていました。下の画像のこのアルバムです。おそらく所持している方もたくさんいらっしゃるでしょう。
（ユーチューブにも全編の動画あり）
（The Amazing Kornyphone Record Label TAKRL 2956）
ところで、管理人は、ザ・フーとは全く関係なく、リック・ウェイクマンの「リストマニア」のミキシングに関する質問をレーベルに送ったのがキッカケで、あるUKメディアのCEOと時々メールを交わしています。
このCEOが、BBCの番組司会などをしていたあるUKアーティストと仕事をするようになり、質問が送られてきました。どうやらそのアーティストさんが、このブートレグに主要な出演者として参加しているらしいのです。
このアーティストさんが几帳面な方で、今までの仕事の記録をスクラップに残していたため、ある疑問が浮かび上がりました。
そのスクラップブックによれば、このアーティストさんが参加した公演は73年12月13日と14日。
ということは、この方が録音されていれば、上記ブートレグは72年の録音ではないことになります。確かに「同じ日に二つの録音」は、「同じ日に同じ劇場で違うゲストと二つの公演」と同じくらい不自然ですね。
そこで手持ちのザ・フー本「ザ・フー・コンサート・ファイル」を調べてみると、73年12月13日公演の記述はあるものの、14日はなし。「エニウェイ・エニハウ・エニホエア」では12日と13日になっていました。
他にインターネットで調べても、どこもあやふやな記述ばかり。
え・・・、これ、もしかして、ザ・フーの歴史が何十年も間違って伝わってる？
つい最近も、ロジャーの幼児期の家の住所が間違っていたのをみつけたばかり。
こりゃ大変、とばかり、英文でも一応ザ・フー公式フォーラムで報告しておきました。
Lou Reizner's orchestra version of Tommy shows in London
Nerd Alert!!!!
I may have to avoid being too detailed, but I thought this is a fan website for The Who fans and it's a kind of discovering Who history. So, maybe worthy of attention to this '50th Tommy anniversary' year.
A CEO of a UK media company sent me an email asking for my help about Lou Reizner's orchestra version of Tommy bootleg. He is currently working with one of the performers who used to host a few BBC TV programs and played a significant role in the orchestral version and he sent a photo from the performer's personal scrapbook to me. I knew that there were a few orchestral shows in the US after the famous charity show at Rainbow Theatre on 9th December 1972, but I was amazed to know that there were also two shows in London in 1973. The photo says those shows were on 13th &14th December 1973. 'The Who Concert File' only mentioned about the 13th show and 'Anyway Anyhow Anywhere' by Matt & Andy says that those shows were on the 12th & 13th. So I assume that both books are a bit incorrect about the actual show dates.
There is also a list of the backing musicians which is fabulous in the photo. The performer seemed to make a special effort to keep his memories. He took his memos of media reviews that were written at the same time as after each show was performed. The reason why Roy Wood got a bad review, etc, for example.
Not sure if I can say more about this later, but I hope they will publish the performer's memories in any kind of format and share us something about the orchestra shows.
A bit lengthy explanation, but the point is, Lou Reizner's orchestra version of Tommy shows in London in 1973 were performed on 13th &14th December 1973, not 12th & 13th.
Edit: Matt Kent kindly confirmed that new version of AAA book has the correct dates. 13th &14th December 1973.
念の為、「エニウェイ・エニハウ・エニホエア」の著者の一人、マット・ケント氏にもメールで確認してみると、「それは古い版で、新しい版では13日と14日に訂正してある」とのこと。（いつも新しい情報を仕入れないとダメですね・・）
それでもまだ、このブートが「いつ録音されたものか」は不明のままです。
話を戻し、そのUKアーティストのスクラップをよ〜く見ると、なんと！全然今まで注目されていなかったのに、参加ミュージシャンの欄に、ある超有名キーボード奏者の名前が・・・！（仮にRさんとしておきます）
そこで、このRさんにこのブートがいつ録音されたのか、CEO経由で質問してもらうと、「もしキース・ムーンが入っていれば、そりゃあ、72年のだろう」とのこと。（「いいかい、よぉく聞けよ、これが、かのご高名なRさん直々のお言葉だぜ・・・」という前置き及び幻想的な美しい教会で演奏している神々しいお写真付き）
いや、その「キース・ムーンかどうか」が似すぎてて分からないレベルだから聞いたんですけど・・・。（下の動画参照。38:00くらいからの奇声がキースっぽい）
仕方ないのでまたマット・ケント氏に聞くと、「そのブートレグは73年の12月にラジオ番組用に録音されたもの」と即答。
「でも、『サリー・シンプソン』（動画56：30~）はすごくピートっぽく聞こえない？」と食い下がると、「ナレーターのディヴィッド・エセックスは時々ピートのように聞こえるね」と。
混乱を極めてしまいましたが、要するに：
・キースとピートが入っていれば72年12月の公演
・キースもピートもいなければ73年12月公演。なぜならキースは当時、映画撮影で不在、ピートは出演者としてではなく、会場で公演を観てロジャーの歌手としての才能を認めた公演だから。更にクレジットされていない著名鍵盤奏者Rさんも参加している。
ということです。
さて、あなたの耳にはどう聞こえますか？
CEOは、UKアーティストさんと有名鍵盤奏者Rさんがブートを聞いた後に、何か意見があれば教えてくれると言っていましたが、もう1ヶ月以上も前なのにメールがないので、きっと当人が聞いても思い出せないレベルなのかもしれません。40数年前ですから。
さて、これを書いている途中で、マット・ケント氏が当時のポスターを発掘して、その画像を送ってくれました。間違いなく73年12月13日/14日の日付が入っています。
これで少なくとも、73年にもその日付で公演があったことだけは確実になりました。
今のところ、聞き手の判断に委ねるしかないのかもしれません。更なる情報収集に努めます。
余談ですが、CEOはいつも自分のレーベル向けのリリースを探しています。もし「再発すべき」「発売すべき」など、陽の目を見ない音源や映像、著書などがありましたらぜひご一報を。
管理人はザ・フーの72年パリ公演の複雑な権利関係を何とかして欲しいのが第一希望です。