ザ・フー

TCT2024年

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3月19日〜26日まで、ザ・フーの支援する「ティーンエイジ・キャンサー・トラスト(以下TCT)」公演を観にロンドンへ。
合間にミュージカル3本、展示会3つを入れて、慌しかったものの、トラブルもなく無事に帰国しました。

【3月20日ザ・フー公演】
毎年3月は何かと忙しく、ロイヤル・アルバート・ホールでザ・フーを観るのはこれが初めて。10月にロジャーから「最後のキュレーション」と知らされて以来、なんとか行けるように画策してきました。

会場のデジタルサイネージ

この日は公演前にフーリガンの皆さんが集まる会場近くのパブで、ザ・フーのアート・ディレクターであり、ウェブマスターであるリチャードや、オランダ人ファンと一緒に軽い夕食。話題はアレです、国際ウェブサイトならではの、みんなお互いの名前がちゃんと発音できないこととVan Goghの正しい発音(ゴッホではなく「ファン・フォッフォ」)(笑)

いただいたお土産もファン・フォッフォ。van Goghのvanは省略できないそうです。


前座のSqueezeが終わると、ロジャーの親友と待ち合わせて、ザ・フー公式掲示板で募ったロジャーへのメッセージを書いたクッキーを渡してもらうことに。

全てに曲名や歌詞にかけたメッセージが載っています。

「これが最後のザ・フー公演になるってさ」と言われ、こちらの怪訝な表情を見ると、「最もロジャーはず〜っとそう言ってるけどね。1982年から」と慰めてくれます。

席は12列目のピート側。なのに前の席に190cm越えの4人が壁となって、ピートは全く見えず、運が良ければロジャーの頭が見えるか見えないかという状況。しかし、その、どうみてもザ・フーに興味なさそうなTCT関係者の若者達も、ショーが佳境になってくると、前列中央へ割り込みに行き、視界が少し開けました。ホッ。

18日の公演では、長年続けてきたセットリスト作りを他の人に任せたロジャーでしたが、この日はまた自らセットリスト作成。(「セットリストが見えない&ピートも今何してるかわからないから」説あり)

スクリーンを見ると、ピートが去年よりもやや痩せて見え、トミー・セットを終えたロジャーがハァハァして苦しそう。やはりこんな苦行は続けるべきじゃないのか...?しかし、ロジャーの親友によると、それはロイヤル・アルバート・ホールという会場の特殊性にあるといいます。ロジャーは常に、この会場では「酸素の供給が足りない」と感じているとのこと。確かにただ座っているだけでも息苦しさを感じました。

好調なピート

途中でエディ・ヴェダーも飛び入り参加。正直に書けば、50歳のエディより80歳のロジャーの方が声量あるようにも聞こえましたが、ありがたい応援です。

エディ・ヴェダーと『The Punk And The Godfather』

最終日の出演をドタキャンしたピートのことを烈火の如く怒っているのでは、と想像していましたが、実際は、ロジャーがピートへの謝辞を述べる場面もありました。

とにかく、ザ・フーはすごい!前座の時に感じた音割れもなく、素晴らしい演奏とロンドンならではの熱気に包まれ、この上なく素晴らしい公演でした。

一方で、このとてつもないエネルギーが消えてしまうのは忍びない。どうにかならないものかと一抹の寂しさがこみ上げてきます。



【3月25日  再びロジャーのタップルームへ】
今回はチャリティの邪魔をしないよう、ロジャーには会わないと決めていて、ロジャーのタップルームにも行かないつもりでした。ところが20日に会ったロジャーとの共通の友人が「もし土曜に来るなら駅まで迎えに行くよ、ロジャーはいないだろうけど」と誘ってくれたので、土曜の予定をキャンセルし、3度目の訪問になりました。

農場周辺は道路工事中で、かなり遠回りしながら、村の美しい通りを経由し、途中で「ここはロジャーが肉を買うお店で...」などと教えてもらい、俗にいう「推しの解像度」が爆上がりして良かったね、と言われました。いや、さすがにそれは不要な情報だから(笑)

ロジャーとヘザー夫人が育てる桜。ほとんど散っていました。

ロジャーがZoomインタビューを行う部屋から見える景色。春を告げる水仙が見頃です。

タップルームに着くと、小雨なのにほぼ満員。テーブルには「〜時から誰々」と予約の紙が貼ってあります。フードトラックでピザを買い、ロジャーの誕生祝いに醸造された特製ビールとチーズの盛り合わせを友人が奢ってくれました。いつもながらビールが美味い!

ピザのフードトラック

ロジャーの誕生日ビール(右上)はここでのみ可能。缶入りはなし。すっきりした味わい。

イギリス国内でビールの醸造は必ずしも成功していないそうですが、ロジャーのビール事業は年間3億円のビッグ・ビジネスに成長中。若い従業員さんの待遇も非常に良く、日本なら10軒くらい入居するアパート一棟よりも大きそうな家が一人用の社宅。当然のように、タップルームのみんながロジャーが大好きで、あちらこちらから「ロジャーが、ロジャーが...」の声。ここはロジャーの領地で、みんな領主様が大好き。

持ち帰りました!ロジャーが好きなのは「Off The Hook(窮地を脱出」という銘柄だそう。一本£6(約1200円)

ピザを食べ終わると、友人が彼の自宅に招待してくれました。同じ農場の敷地内にあるこの友人の家は、絵に書いたような美しい英国式の邸宅。もう40年もイギリスに住んでいるというのに、フランス出身の奥さんが仏語訛りを感じるか、とても気にしていて、それを強い日本語訛りの私たちに聞く?と思うくらい。やはりアクセントは大事だなあ、と反省です。ティーも「色の濃さ」をとても気遣ってくださり、予備のミルクとお湯を用意してくださるハイスペック仕様。こんな至れり尽くせりのホストファミリーだったら留学してみたい。

その家のギターをロジャーが来て弾き、歌い、一緒にお茶を飲み、週に2〜3度会う。それが何十年も続いてる!これ、もうファンとしては完璧なシチュエーションですやん!教養に富み、優しくてよく気が利くこの友人は、まるでロジャーの忠実な執事のよう。話を引き出して、広げていってくれるのがとても上手い。

前日の金曜にロジャーとヘイスティングスのレストランで夕食をした時に、日本からのお土産とクッキーを渡してくれたそうで、ロジャーが後でメールするとのこと。あいにく今日はロンドンのウェンブリーで最終日のリハーサルがあるため、私たちが到着する2~3時間前に出発したそうです。
 

ヘイスティングスにあるロジャーお気に入りのレストラン。カジュアルでお財布に優しく、美味しいです。


超多忙でしょうから、まあ期待せずに待っときましょ。...と忘れていたら、ずっと病気だったとかで、日本に帰国後、ちゃんとメールしてくれました。「会えんでガックリや。ロンドンでリハーサルしとってなぁ。田舎の家におるんやったら、会えるように、いつでも全力尽くしたるわ!覚えときぃや!(無理訳)」多分この友人がリマインダーの役割をしてくれたんでしょう。エイプリルフールだからか、気前の良い言い回し。ロジャーってお金をかけずに人をハッピーにさせるのが得意なんですよ。それにしてもまたタップルームへ行けるんだろうか...。いつか他のファンの方達とオフ会ができれば最高ですね。

【24日Ovation(大喝采)公演】

今回はこのために来たようなもの。ロジャーのキュレーターとして最後の舞台を見届けたい...。その一心でした。
今回はコーラス席というステージの演奏者の後ろ姿しか見えないけれど、観客からは注目されやすい席。「最後にバナーを掲げるからバックステージ・ブログ用の写真撮って!」とキーボード・テックのブライアンにメールを送るも、「悪いね。その日はもういないんだ」
この日の技術陣は、あの優秀なザ・フーのクルーじゃない??心配は無用で、実際には音響面の不備は全くありませんでした。
 

「あなたの愛なしでは、私たちは団結できなかったでしょう」



誰が前座で、何時から始まるのかもわからないまま、「7時10分開演」を信じて席に着くと、その少し前にもうロジャーが出てきて挨拶。順番もわからないので、売店で購入したTシャツの裏に記載された名前を頼りに見ても、それもなんか微妙に違う。

出演者の後ろ姿しか見えません(涙)


結論として言えば、最初はポール・ウェラーがソロで、途中ロジャーと「ソー・サッド・アバウト・アス」を共演。次はケリー・ジョーンズ。24年前の最初のTCT公演、ジョン・エントウイッスルとの思い出も混じったトークにウルっときます。3番手はエディ・ヴェダー。ピートの弟でエディの前座を務めたこともあるサイモン・タウンゼントもソロ曲を披露。娘さんも参加。サプライズ・ゲストにグレン・ハンサード。

4番目にロバート・プラントwith セイヴィング・グレース。サマソニで来日の時は寝てしまった同行者も、これがとても気に入っていました。
ロバートはロジャーに「ここではみんなが、この目的だとか、目覚ましいほどの君が作った体制とかを話しているけど、言っときたいことがあるんだ。1965年に戻ってもらうよ。僕は16歳で、F**king・モンスター・グループを観たんだ!その時は気がついてなかったけど、そこでまさに、『ゴールデン・ゴッド』ってのを観たんだよ。で、思ったわけ。『ど う や っ て やってるんだ?』って。ほら、僕と君は多分、唯一の数少ない、『ギターを弾かないフロント・マン』だろ。で、君のことをずっと見てきたんだ、側でね。何度も会う機会があっただろ...」これだけでいい人オーラが出まくるロバート・プラント!拙著「ザ・フー公式インタビュー集」にもあるように、さすが一緒に旅行する仲!ロジャーも嬉しそうに「素晴らしい友達なんだ!無条件でやってくれる!」と二人のゴールデン・ゴッズが褒め合い、認め合う姿は本当に感動的でした。迫力あるステージもとても良かった。

そして真打登場。ロジャーのバンドが登場する前から、みんなが立ち上がってお出迎え。観客からいかに愛され、尊敬されているのかがわかる。
ロジャーが一声出すと、本当に違う。何もかも、声量、音楽性の豊かさ、技量...、全てが圧倒的に違うんです。ファンであることを抜きにしても、さすがレジェンド。
ここでもサイモンが自分のソロ曲で日本公演でも演奏した『The Way It Is』を一人で歌う。バイオリンのケイティを除いて、他のメンバーはただ見守って立っているだけ。コーラス席からは観客の動作がよく見える。サイモンとわかるとみんなが一斉にスマホを下ろす。これはキツイ。同行者がボソッと「ピートの不在で空いた時間を埋めなくちゃいけなかったのかもね...」
30分ほどの短いセットには、土曜日に友人から聞いていたネタバレ曲(『ブルー・レッド・アンド・グレイ』など)が一曲も登場しませんでした(笑)リハーサルで変えたのでしょう。
 

会場にあったSteve Mitchellのポスター。サイン入りの購入はこちら

 
さて、ザ・フーの将来についてですが、今のところ、ピートは「お金のために今までツアーをしてきた。這いつくばって死ぬ前に、ワールド・ツアーを考えている」と言っています。反対にロジャーは、フーのツアーには積極的ではなさそうです。最終日のバックステージで「ザ・フーは終わった」とロジャーが言っていたという噂もあります。ロジャーの気持ち次第でワールド・ツアーがあるかもしれないし、ないかもしれない。要するに、まだ何も決まっていないようです。個人的には、ロジャーにはザ・フーよりも優先したいことがあるけれど、それが今停滞している状態なので、決断できないのではないかと推測しています。まあ、順調に行くようじゃ、ザ・フーらしくないですよね。のんびり待ちます。そしてもしUKツアーがあるとしたら...、それまでに円安、おさまって欲しいです。

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