確かなのは、「フーのミュージカルにはならない」
ということです。
さて、海外ライヴ参戦組の皆様!
クリスマスにはある近年のライヴのリリースがあるとのことです!お楽しみに!
そして現ソロツアーのセットリストについて。
こちらは既に動画サイトに映像が投稿されていますが、「特に新しい曲はやらない。やったことのあるフーの曲、ソロの曲、ウィルコとの曲だ。でもアレンジは全然違う。『ババ・オライリー』もガラッと変えてある。『レット・マイ・ラヴ〜』はケイジャンっぽい」
最新ソロアルバムでは、『ハウ・ファー』が好きだと伝えると、「一度リハーサルはしたんだよな。オックスフォードでやるかも」と言っていましたが、結局演奏せず。
世間話に興じていると、「湖を一緒に散歩しようか?」とロジャーからの嬉しいお誘い。
敷地の非公開部分につき、立ち入るには許可がいるとのことで、農場の管理人さんに聞きに言ってくれました。
ロジャーと長い付き合いで信頼されているDJが、一緒に湖のほとりを歩いた話を思いだし、自分にもモデレータ兼広報係として、ロジャーのあるがままの姿を伝える役割を求められているような気がしました。
後で戻って来た時のために、ラップを取りに行き、
チーズの盛り合わせやレバノン料理、ジュースの残りにかけ、
冷蔵庫に。食べ物を粗末にするのは嫌いなようです。
一生の不覚ですが、ビールの醸造所だというのに、
ビールを頼まなかった私、バカバカバカ!
「...ビール、上手いのに」と言われても、テンパってて、つい忘れちゃったのです。追記:同行者が後で訂正してくれました。ビールを楽しむナイジェルとロジャーの前で「普段アルコールは飲まないんです。酔っ払うと頭がクラクラしておかしな行動をとるから」即座にロジャーから「アルコールを飲むのは全部そのためだろうが!」いや、ごもっとも(笑)
歩きだすとすぐに、昨年、腰椎の圧迫骨折をした私の足元がおぼつかないのに気づき、「本当に歩けるかい?」
記憶に間違いなければ、全部で5キロ近い道のりになるはず。同行者が必死に「ダメです!ここで万一転べば、イギリスでまた数ヶ月寝たきりになっちゃいます!」
「農場のトラックを持って来てやるよ。すっげえキッタナイやつだけど」と一人戻り、結局友人の車を借りて来てくれました。フットワークの軽い脅威の78歳。
後で見たトラックはかなり車高が高く、多分乗れないと思ったのでしょう。結局ベビーシッターの延長状態になってしまい、申し訳ない。
車に乗り、いよいよロジャーの王国へ出発。ナイジェルは同行せず。
BBC『トップギア』にロジャーが出演した回をご覧になった方ならお分かりでしょうが、ロジャーの運転は思い切りがよく、かなりの腕前。
とはいえ、湖のほとりには道と呼べるような道はなく、ただ単に、草の上を誰かが踏んだ跡があるだけ。平坦な場所はまだしも、高低差がある場所では、高い木々の間を通り抜け、まるでディズニーランドのジャングルクルーズのよう。
世界的ロックスターとデコボコ揺られながら、自分の骨折体験を語ってしまい、我に帰って恥いるばかりでしたが、「わっかるよ〜。ありゃ、キッツいよな〜」と、どこまでも気のいいおじさん風のロジャー。
自らデザインした4つの湖のコンセプトを説明しながら、「とても誇らしく思っている。自然が俺の友達だ。フェラーリは持ってないよ!(大笑い)」
「これを全部一人で作られたんですよね?」と聞くと、
真顔でじっとこちらを見つめて、
「いや、一人じゃない。3人だよ」
話を盛ったりせず、あくまでも正確に伝えようとする正直なイメージのロックスターそのもの。
昔の養魚業の名残などを見ながら、ロジャーが手掛けた様々な事業にも想いを馳せ、「先ほど、マッカートニーの80歳の誕生日の話をしましたよね。あなた自身の80歳のプランはどうなっています?」と尋ねると、笑いながら「おお!分からない!喉次第だからな。検討がつかないよ!...でも『前より良くなった』って言われるんだ(ニヤリと笑う)」
絵画のような小島に目を奪われていると、車を停めて、「写真撮れ!」
折角なので、彫刻のようなロジャーの横顔も入れようとすると、何故か「俺はダメ!俺はダメ!俺はダメ!」と笑いながら、必死にのけぞり、フレームに入るまいとプルプルしながら座席に身体を沈めるロックスター。仕方ないので、ロジャーの上に思い切り身体を乗り出して撮らせてもらいます。
「日本っぽいだろ?」と、その場所は当人のお気に入りでもあるようでした。
ドライブのクライマックスは牛舎。放牧中で、中に牛はいません。70年代に雑誌で見た、巻き毛をなびかせて上半身裸で放牧する姿の記憶と、横に座る親切で陽気な白髪のおじさんの姿が重なり、感無量です。ああ、こんなに長い間、この人は私のアイドルなんだ...。
遠くに見える釣り人に「ありゃダメだな、この天気じゃ時間の無駄だわ」等と、たわいないお喋りが続くなか、日本と英国の国民性の違いについても触れるロジャー。日本人の勤勉さが気に入っているようでした。
「イングランドの若い奴には、怠け者もいるからなあ」
「でも、貴方は働き者ですよね。牛の放牧に釣り、歌うことや演技...。どうやって全部こなしているんです?」
「どうかなあ?なんせ15歳からず~っとこうやって働いてきてるんだから。それが当たり前になってるしなあ」と大笑い。
30分ほどのドライブを終えて醸造所に戻ると、また冷蔵庫から飲みかけのジュースを持って来てくれました。本当に気が利く!
ナイジェルを交え、みんなで写真を撮ると、そろそろ帰りの列車の時間。ロジャーもベビーシッターに戻るため、徒歩で今来たばかりの道を帰りました。約3時間半の楽しい滞在が夢のようです。
駅まで送ってもらう途中、ロジャーの屋敷が見える私有地にも連れて行ってくれ、「あの窓がロジャーの寝室で、あそこは...」と説明してくれるナイジェル。
この辺りの土地は肥沃ではないため、作物が育たないことから牛の放牧を選んだようですが、昔読んだインタビューで、カントリーサイドの雇用問題について話していたのを思いだします。
領主としてこの「ロジャー・ダルトリー王国」を束ね、地元の若者らの雇用を産み出し、それと同時に初期からの開墾仲間を今も大切に扱っているのに感銘を受けました。
常々ロジャーは青池保子先生の漫画に出てくるような、「今年は○○が足りないから、あの土地をみんなで襲ったろ」と相談する、沈着冷静な領主の1人のようだと考えていましたが、当たらずも遠からずだったようです。
広大な土地の長としての立派な人生がありながら、ザ・フーを続けてくれることに改めて感謝です。
ところでロジャーの醸造場ですが、行ってみようという方はご注意ください。
・必ず車を手配。最寄駅から徒歩で行くのはまず不可能です。
・予約はした方が絶対いいけど、返信が遅い。手を替え品を替え人を替え、6度目に「常連さんがメインで、インターナショナル・ゲストはお呼びじゃないの?それならそう言って」と泣きつくと、ようやくロジャーの義理の息子さんから返信あり。ホームページにある予約サイトの利用がオススメ。