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『ビーズ・オン・ワン・ストリング』Yaggerdang リミックス

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10月30日発売のアルバム『WHO』デラックス盤は、昨年発売された『WHO』に2020年2月にロンドンのキングストン公演のアコースティック・ギグからの抜粋と、『ビーズ・オン・ワン・ストリング』の「Yaggerdang 」ことピート・タウンゼントによるリミックス版が含まれます。

そのリミックス版が先行配信されました。ここではリリック・ビデオを取り上げます。

ドラムがマシーンに代わり、ロジャーのボーカルが置き換えられており、好みは人によって様々ですが、概ね好評なようです。個人的にはベースラインで幾つか印象的な部分があります。国内盤歌詞カードとは異なる部分があるので、その比較表を下に投稿しています。

クレジットは以下の通り。
Producer, Associated Performer, Guitar, Organ, Bass Guitar: Pete Townshend
Producer, Co-Producer, Studio Personnel, Mixer, Engineer: Myles Clarke Associated Performer,Vocal Producer: Dave Eringa
Producer, Additional Producer, Associated Performer, Synthesizer Programming: D. Sardy
Associated Performer, Vocals: Roger Daltrey
Main Artist: The Who Studio Personnel,
Engineer: Dave Sardy Studio Personnel,
Engineer: Jim Monti
Associated Performer, String Arranger: David Campbell
Programmer: Martin Batchelar Studio Personnel,
Mastering Engineer: Jon Astley Composer Lyricist: Pete Townshend Composer Lyricist: Josh Hunsaker

先行配信にあたり、ピート・タウンゼントのメッセージも新たに公開されました。

「ビーズ・オン・ワン・ストリング」のリミックスは、最初のソロのデモにある繊細な部分を取り戻さんとする冒険だった。スタジオ版は気に入ってるんだが、マイルス・クラークと俺自身によるこのリミックス版は、共同作曲者のジョッシュ・ハンセーカーと共有した元のシンセサイザーのデモに戻している。また、天才ピノ・パラディーノではなく、(厚かましくも)俺がベースも演奏した。本物のドラムは取っ払い、共同プロデューサーのマイルス・クラークがプログラムしたコンピュータ・ドラム・トラックに戻った。 また、ロジャーのボーカル・トラックは、より心のこもっている第一弾を復活させた。 これは、この曲のもっと穏やかなバージョンであり、おそらく無理が少なく、お互いに自分の道を遮二無二通そうとして互いのスペースに切り込む必要性を減らしている。なぜアルバム版よりも穏やかな必要があるのか? 誰もが自分の問題を他人のせいにする誘惑に駆られている時代には、それが独自のものでなければならないからだ。例え「神」ですらそうだろう、その神が男なのか、女なのか、あるいはその両方であったとしても。新しいリスナーにとって、ロック調が減り、よりモダンなインディー・ポップに聞こえることを願っている」

このメッセージを訳するのに、何度も何度も悩んだ結果、曲のテーマである「世界中の宗教を一本の糸に通して繋げる」ことに立ち返ってみました。誰もが自分のトラブルを人のせいにしているこの時代、どんな神(宗教)であろうと、その名において、他宗教の人を殺めることは許されない。独立した宗教として、他の宗教とも繋がれるはずだ、という意味なのではないか?と。そして、ここでも日頃感じているピートの「集合体の中の個」に対するこだわりを思い浮かべました。集まって何かの形を作るが、決して溶け合うのではなく、一つ一つが個性を持ち、際立っている......。皆さんはいかがですか?他の意見も求めてみたのですが、「自分とロジャーの仲が悪いことを言ってるようにも思えてくる」と(笑)そして関西の「知らんけど」を神のくだりにつけて解釈してて、「知らんけど」万能感に敗北しましたが、あえてこのままにしておきます。

国内盤との違いは以下の通り。

国内盤 リリックビデオ  
You don't have to look for them You don't have to look far 探す必要はない-->遠くまで探しに行く必要はない(側に幾らでもいる)
God's just dust God's in the stars 神が単なる塵ではちょっとマズイ(笑)
Then we look for the defects Then we look for the defect このdefectは直前のflawと対になっているので定冠詞theが付き、その前のperfectと韻を踏ませていると思われる。
And we send all our children We send all our children 冒頭のandなし
It's our fear that we're buildin' It's our fear that we will fill them 自分達だけで完結するのではなく(次世代の)子供達への影響が読み取れる

聞き取りはさておき、国内盤対訳で違和感があるのは

This can't go on forever  こんなことが永遠に続くはずはない
This war in a ring    こんな戦争という見世物によって
Gotta bring us together  俺たちが繋がりあわねばならないなんて
Like beads on one string 一本の糸に通した数珠玉のように

という部分。Gotta bring us togetherは何度も出てくるが、Thisを「戦争に『よって』繋がりあうこと」としたために、他の部分との整合性が保たれなくなっている。おそらくGonna bring us together と歌われる部分と区別化したかったのかもしれませんが、Thisは「戦争(という見世物)」のみに解釈し、単に「繋がらなくてはいけない」メッセージを伝えた方がいいのではないか、と考えました。一方でringを「見世物」としたのは思い切った解釈だと思います。形容詞がなく、冠詞から、a group of people (一味)や、文字通りの閉ざされた環の可能性も捨てきれないですが、便宜上そのまま習います。

こんなことが永遠に続くはずはない 
こんな戦争という見世物なんてものが 
俺たちは繋がりあわねばならない

追記:英語ネイティヴスピーカーの意見を募った結果、 「This war in a ring」は「繰り返す戦争」、そして人間がそこから決して学ばない悪循と解釈することにし、「戦争という悪循環」に考えが至りました。曲のテーマにもしっくりくると思いますが、どうでしょう?

こんなことが永遠に続くはずはない 
こんな戦争という悪循環なんてものが 
俺たちは繋がりあわねばならない

もちろん、いつも書いているように、解釈は一つではなく、その抜け感(リスナーに委ねること)がピートの曲の価値を高めています。物知りでなければいけないわけでもなく、シンプルに受け取ることも出来ますが、考えに考えて、英国史を調べ、パズルの最後の一つがはまったように腑に落ちる時もある。だからザ・フーは面白いんです。

アルバム『WHO』の各曲レビューはこちら

アルバム版(デイヴ・サーディ・ミックス)

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