ザ・フー ピート・タウンゼント

ピート・タウンゼントの名言:ロックンロールは・・・

投稿日:2018年4月13日 更新日:


『ロックンロールは、別に俺たちを苦悩から解放してもくれないし、逃避させてもくれない。ただ、悩んだまま踊らせるのだ』

ピート・タウンゼントの名言に迫る:第3回目

第1回目・第2回目のブログでは、ピートの発言がテレビで見た視聴者によって記憶され、世界的に少しずつ変化してきていることについて書きました。

今回はこの発言があった時期のザ・フーがどんな状況だったのかについて、少し掘り下げていきます。

何度も書いた通り、1978年はザ・フーにとって3年振りのアルバム「フー・アー・ユー」が発売された年でした。前作は75年のハイナンバーズ。

その3年間に何があって、どんな変化があったのでしょうか。

その変化を探るため、一度、75年にまで遡ってみます。

というのは、75年、すでにピートとロジャーはロックンロール論争を公に行っているからです。

75年というのは、映画「トミー」と「リストマニア」にロジャーが主演し、グループは念願の映像分野に進出、後の「ザ・フー・フィルム」設立に繋がる時期。ザ・フーにとって、何度目かの過渡期にあたります。

また、マネージメントの主導権が、キット・ランバートとクリス・スタンプから、元々はロジャーの個人マネージャーでもあったビル・カービシュリーに移っています。

映画とマネージメント、この二つがロジャーに有利に働き、それまでピート主導だったバンドの中で、ロジャーとピートの対外的な立場に変化が生じていく頃でもあります。

遂に二人は、英音楽雑誌NMEの記事の中で公然と大人気なく激しく応酬しあい、その中で「ロックンロールとは何ぞや」を語っています。

まず、NME1975年5月24日号はピートのインタビュー。
BBCの前でベイ・シティ・ローラーズを待っていた女の子達に「あ、ピート・タウンゼントだ」とスルーされ、ドアマンから「どんな気持ち?」と聞かれて「涙が出る」と答えたところから始まります。昔はドアが壊れるほどザ・フーはもてはやされたのに、と。
(実際、かなり長いインタビューにも関わらず、この回の雑誌の表紙にもなっていません)

若干30歳にして、ピートはもう、自分たちが時代遅れだと思い込む「ミッドライフクライシス」に陥ってしまったようです。
(2018年現在、74歳になったロジャーは「ミッドライフクライシス?31歳?その頃に戻りたいもんだ」とライブでアルバム「ハイ・ナンバーズ」の曲を演奏する時や公式メッセージビデオでも笑いとばしています)

全体として、「ザ・フーのメイン・ソングライター」という自身の責任の重さにプレッシャーがかかっていることや、その時代を代表する音楽や、馬鹿げた振る舞いをするロックスターたちの態度、並びに自分たちのオーディエンスとピートが抱く理想との間に隔たりが生じていることの不満で、記事は成り立っています。

この記事からずっと後のNME誌でも、ピートは「ザ・フーは、パンク出現前には唯一の、『音楽の方向性』を話し合うバンドだった」と語っており、インドの伝道師メヘル・ババに惹かれ、自分の音楽を重視するピートにとって、受け入れ難い状況だったのかもしれません。

この記事の後、ザ・フーはアルバム「バイ・ナンバーズ」をリリースしますが、前年の74年にもブートレグ対策としてレア曲集アルバム「オッズ&ソッズ」を発表しています。ご存知の通り、「R」「O」「C」「K」と書かれたヘルメットを被ったメンバーの写真がカバーに使われたアルバムです。

ピートはこの「オッズ&ソッズ」を出しても尚、新しい曲、ロックオペラを望むファンの声にうんざりし、ロジャーの映画撮影、ジョンのソロツアーでなかなかアルバム製作が出来ないから自分のソロ作品に取り組んでいるのに、と不満を述べています。

怒りの矛先はロジャーにも向かい、記事の中で、痛烈にロジャーを批判しているのですが、そこでピートは「ロックンロールとはなんぞや」を持ち出しているのです。

「『ロックンロールとは、レコードを作って、女の子たちを集めて、ムカついて、楽しいひと時を持つもんだ』なんて、お定まりの古臭い作り話なんて忘れちまえ。ロジャーだって、本当は信じちゃいないと思うよ。そんなの、実のところ、あいつが信じておきたい『ロックンロールとは何ぞや』なんだろうさ」

三ヶ月後、ロジャーは同じNME誌8月9日号で反論。
「あいつが俺のことを全然理解していない証拠。自分の人生で、そんな類の生活に当てる割合なんて、取るに足りないほどちっぽけだからだ。もしそんなのがロックンロールだとあいつが考えてるんだったら、冗談を言ってるように俺には聞こえるね」

 

 

 

更にピートは同上の75年のNMEの記事の中で、「多くのキッズにとって、ロックンロールは全く意味がない」とテレビや映画やフットボールのような娯楽だと答えているのです。

あの名言とは正反対ですね。

その後、ザ・フーは「ザ・フー・バイ・ナンバーズ」をプロモートするツアーに出ます。

次回はいよいよ(やっと)78年についてです。

(4)へ続く

Comments

> 前のページへ  > 続きを読む 

-ザ・フー, ピート・タウンゼント
-

Copyright© <ザ・フー>The Who's Japanese Fans! , 2024 AllRights Reserved Powered by micata2.