ロジャー・ダルトリーのソロツアーに行くため、ゴールデンウィークに渡英しました。
1日目 ナショナル・ポートレイト・ギャラリーの『ザ・フェイス・マガジン』展へ。80~90年代のファッション、音楽、若者文化を融合させた雑誌の回顧展で、その間のイギリスと政治・文化・土地ごとの結びつきがわかりやすく展示されていました。時代的にザ・フーは当てはまらないものの、ザ・フーが形成した若者文化の影響を感じるものもありました。
2日目 ロジャーとの共通の友人夫妻と一緒に、ロジャーのタップルームへ。4回目の訪問。ロジャーの息子さんのジェイミーとも再会。日本人が珍しいのか、覚えてくれているそう。友人とはキースの映画の状況のほか、ザックの解雇の件など色々話してきました。真相?それを言う立場にはないけれど、巻き込まれたロジャーが大変気の毒とだけ言っておきます。

3日目 イーリングのウェスト・ロンドン大学(旧イーリング・アート・カレッジ)に出来たタウンゼント・スタジオへ!

ピートのシンセサイザーを展示したスタジオで、ピートの母校でもある同校に、2024年に開設されました。学生が実際にここで学ぶこともできます。

ちょうどロンドン到着日である4月26日に「オープン・キャンバス・デー」が開催されるという情報があったので、大学ウェブサイトに記載されているEメールアドレス宛に「公開日にスタジオも一般開放されるのか」と尋ねても、音沙汰なし。
直接訪問すると、セキュリティの方から「アポなしは入場不可」とあっけなく門前払い。2度メールしても返事がなかったと粘ると、もう1人の守衛さんが「ウェブサイトにある番号に電話してみろ」というので、公表されている2つの番号にかけるも、自動的に切られてしまい、全然繋がらない。「国際電話だからだよ」と笑われてしまう。いや、eSimのローミングで英国ナンバーからかけてるんですけど。「メールも電話も繋がらないのに、一体どうやって連絡を取ればいいの?」すったもんだしてると、ようやくスタジオの担当者と5分間だけ話せることに。この担当者の方が相当なピートのファンで、すっかり話が弾み、10分間の見学の筈が、かなり長いこと丁寧に説明して頂きました。
「この曲はこのシンセで、あの曲はあのシンセで…」と、聞いているだけで「うぉぉぉぉ...!」と鳥肌もの。特に、私はヤマハのGX-1という初代シンセサイザーであるエレクトーンを大昔に弾いていたことがあり、中身のシーケンサー部分を見せてもらって、感涙もの。この担当者やピートが知らないこともまだ覚えているので、今後も連絡を取り合うことにしました。
ザ・フーのネイルを気に入ってくれ、ピートにその写真を送ってくれるそうです。ピートはある場所(さあ、どこでしょう?インスタではありません)でのファンのコメントやフィードバックを読むのが大好きだということですよ!

それと聞き捨てならない情報が一つ。『The Age Of Anxiety』を作ったシンセも見せてもらいました!そうです、もう仕上がっているんです。

夜はリッチモンドのミュージカル『ロッキー・ホラー・ショー』を観に行くので、その前に、ピートが以前住んでいた『ザ・ウィック』へ。眼下に公園の素晴らしい景色が見渡せる邸宅で、ピートの前はロニー・ウッドが所有。
4日目 カムデンタウンとカーナビーストリートのモッズファッションの店で60周年Tシャツなどをゲット。ザ・フーのGジャンを着て歩いてると、早速目をつけられて、お店に吸い込まれてしまい、まんまと買ってしまいました。


5日目 移動日。ボブ・ディランのアート展などを見学。
6日目 ロジャー・ダルトリーのゲーツヘッド公演へ。今回は着物で参戦。

気合いのキース・ムーン羽織。何ヶ月もかけたお針仕事。
同行者は、今回のツアーをロジャーが考える「人生」そのものと捉えたようです。ツアーのタイトル「元気でピンピンしてるぜ、それに楽しんでら!」に加え、セットリストのチョイス(それに時々『アナザー・トリッキー・デー』があり、やり直ししたい曲がある)、そしてステージ・トークの「(携帯の)スクリーンに映っている何処の誰かわからない奴じゃなく、実際に目の前にいる友達を見ろ。俺の孫もずっと見てるんだ。携帯代払ってるのは俺なのに!」「平日必死に働いて、週末に友達と遊ぶのを楽しみにしていた。今となっては叶わないが、幸せだった」などのコメントから、「良く働き、良き友人と楽しめ。それが人生だ」というのがロジャーから観客へのメッセージだと捉え、自分も前向きに生きていこうと思ったようです。
肝心のパフォーマンスは、幾つも動画が上がっているので、それで確かめて欲しいのですが、控えめに言って、81歳でこれはオカシイ。半世紀以上も同じキーで、こんなに朗々とパワフルに歌えるなんて。バンドメンバーも和気藹々として、ロジャーのジョークを楽しみ、一つ一つの曲を丁寧に演奏しているのが伝わってくるし、カバー曲のアレンジも秀逸でした。
9日目 ロジャー・ダルトリーのマンチェスター公演へ。ここからますますウザくなるので、心して読んでください。
マンチェスターは自由を戦って勝ち取ってきた土地柄。民衆の歴史博物館で人権を学び、公演当日の昼間は科学産業博物館へ。時間を確かめようとスマホを取り出すと、ロジャーからのメールが!!!
「この頃は返事が遅くてごめんよ。多くのプレッシャーに晒されてて(わかるよ、アレのことですね...)、時間が全然ないんだ。もしマンチェスター公演に来るなら、8時ごろに会えるかもしれない。秘書にテキストして」
信じられない!去年のチャリティ動画の個人メッセージで、「マンチェスターで春、会おう」とは言ってくれていたけど、覚えていないだろうし、色々タイミングも悪い事ずくめで、「今年も会えないな」と思っていたところに!!さすがロジャー、「約束を守る男」でした!!
それからは展示も全く頭に入らず。大体、イギリスの番号にテキストする方法も全くわからない。とにかく秘書さんと連絡取らなきゃ。サウンドチェックが始まって携帯を見なくなる前に...!鬼の形相でググる。え〜ん、出来そうで出来まっしぇん!「送信」にならない!契約したeSimは10数通のテキストが送れる筈だけど、テスト的に同行者に送るだけでその枠を使ってしまいそう...。原因がわかり、やっと「7時ごろ会場に行く」と送ると、「着いたら電話して」と返信が!…ホッ!
7時を過ぎると「ステージ脇にいるから来て」と秘書さんの方から電話あり。シゴデキさんだ。ステージを通って、裏をグルグル回って、バンドラウンジに連れて行かれ、「ロジャーは今、うたた寝中だから、コーヒーでも飲んで待ってて」。ケータリングがとても充実してて美味しそう。待機中にロジャーのバンドのドラマー、スコットが来たので一緒に写真を撮ってもらいました。他にゲストはいません。
そしてとうとうお迎えが!ロジャーの更衣室は階段を上がったところで、足腰が悪い私は一苦労。全部のドアを開けて辛抱強く待ってくれる、優しくて気が利く秘書さん。71年からこの仕事をしているそうで、78歳で日々変わる会場の作りを覚えて、歩き回り、スターのお世話をするのは大変だろうと思います。
そして、遂にロジャーとご対面!
会うなり私たちの「ザ・フーなんちゃって着物」姿をひどく気に入ってくれて、秘書さんに命じて写真を撮りまくり。ロジャーが自分からファンの姿を撮ろうとするなんて、しかも自身のスマホに収めようとするなんて、思ってもみなかったので、そこでまず「何コレ...?」状態。いや、もしかして日本から追っかけてくるファンもいることを家族や関係者各位に見せるためなのか...?秘書さんに「この写真、後で送ってもらえませんか?」と聞くと「ロジャーがメールするよ」と。えっ、本当に?(今現在、届いていません)
追記(5/14):その後、ロジャーからお土産へのお礼メールが届き、「日本の着物文化は何て素晴らしいんだ!」とあったので、思い切って「「写真送って頂けますか。スマホのスクリーンに映るものはリアルじゃない、現実を見ろって仰ってましたよね。あなたのスマホから取り出して印刷して額装して飾ればリアルになりますよ」とお願いし、無事送ってもらいました。写真を追加しています。

ロゴを型抜き。慣れないローリングカッターで血だらけに...。

浴衣用付け帯にTシャツを巻きました。

前はこんな感じ。帯揚げがはみ出しているけど、着物ポリスがいませんように。
今回は完全にロジャーのペースで物事が進み、ロジャーが実行している健康法(?)を教示してくれ、それが何のことか全然わからないので、頭を完全にそっちに持ってかれました。ロジャーのパーソナルな習性なので詳しく触れないけど、要するに「体に有害なもの」を判別するらしく、私の場合は、バナナは可だけどダイエット・コークはダメとのこと。この「有害なもの」をテストするのに、ロジャーと一緒に楽屋をあちこちウロウロ...。なんだ、この流れは...。同行者は「こうやって長いこと、自分にとって良いものと悪いもの、人を判別してサバイバルしてきたんだろうね」と。私は愚鈍な人間なので、ロジャーが意図するところや信じる事はよくわかりませんでしたが、81歳であの声を保っていられるなら、十分効果があるのでしょう。
ただし、やり方を教えるために私の頭や手指を掴むロジャーの指先はとても冷たくて、心なしか小刻みに震えており、「これでギター弾けるのかな?」と少し心配になるほどでした。しかも、どの指かも良く見えてなかったかもしれない。健康の話題で、視覚のことや、膝のことも聞いてみましたが、どちらも年齢によるもので、今のところ深刻ではなさそうです。膝の手術も予定がないとのこと。他にはタップルームの話などもしてきました。
ロジャーから送ってもらった写真(追加1)
同行者は上述したような「人生」についての解釈をロジャーに伝えましたが、ロジャーは何も言わなかったものの、否定もせず、ゆっくりと頷いていました。
ロジャーが更衣室を出るのは珍しいらしく、何日も前座を務めていたバンドがチャンスとばかりにロジャーとの写真をお願いしてきたので、ここらでおいとましたほうが良さそうです。その前に一つだけ、アメリカのファンに頼まれていた質問を聞いてみました。「本当にサイモンのオムツを取り替えていたの?」答えは「そんなことはない。もう4歳だったから」これを聞いていた秘書さんが気を効かして、サイモンを呼んできてくれました。サイモンの答えは「本当だよ!」さあ、どっちが正しいんでしょう?
サングラスをかけていないロジャーは、左目の白濁が進み、2年前より全体的に老いを感じさせ、ハグで別れる時、気のせいか「今生の別れ」のように感じてしまいました。そして、ロジャー自身もそれを悟っている...。心配性の悪い癖です。
一緒に撮りませんかとお願いすると、「サングラスしないとな。もっとロックスターらしく見えるだろ?」と準備するロジャー。(追加2)
会場の席についてしばらくすると、また秘書さんから電話。急いでステージ脇に駆け寄ると、「ロジャーがこれを渡してくれって」と差し出すのは、4つに折り畳まれた紙。開くと、ゲーツヘッド公演のセットリストに私の名前をいれてサインしてありました。普通のスターなら、面会が終わったら、公演に備えてすぐ頭を切り替え、ファンのことなど抜け落ちてしまうでしょう。それが、別れたあとも数分間、思いを寄せてくれて、その時に出来て相手が喜ぶことをサラッとしてくれる…。これが伝説のスーパースターなのか。家宝です。フレームに入れて大事に飾ります。

71年からロジャーやザ・フーに仕えている秘書さんが、「ロジャーは喜んでいるみたいだ。大体、自分からメールして面談を手配するなんて、ロジャーは滅多にしないよ」「(ファンと)メールをやり取りすること自体、ほぼない」とびっくりしていて、幸運に感謝。自分の数十年に渡る推し活冥利につきます。これからもついていくよ!
マンチェスターのライブはいくつかの記事にもあるように、活力に富み、元気を与えてくれるものでした。この公演で会う約束をしていたUKファンは、2列目にいて、ロジャーが発声した途端、座席に打ち付けられたような衝撃を感じたと言います。ザ・フーの時とはまた違う、迫力と熱気。それが愛に包まれているとでもいうか...。そうです、高齢の男性ファンが81歳のお爺さんが描かれたTシャツを買い、誇らしげに身につけている。多くの人に愛される存在。
ソロツアー全体を通して、ジョン・フォガティの著作権問題、ポール・サイモンの南アフリカ問題、そしてこのツアーが年老いたミュージシャンやクルーをサポートするために行われていること(口にはしませんが、22年と同じくロジャー自身はノーギャラなのかも?)、音楽業界の問題点を観客に訴えています。
ありがとうロジャー、北米ツアーには多分行けないけど、またいつか会える日が来ることを願っています!