ロジャー・ダルトリー 翻訳

何故今も『トミー』なのか

投稿日:2012年1月27日 更新日:


ロジャー・ダルトリーが今も『トミー』にこだわる理由

http://au.news.yahoo.com/thewest/entertainment/a/-/music/12741019/roger-daltey-on-why-he-still-gets-tommy/
BOB GORDON, The West Australian

ロジャー・ダルトリーは、見事なピンボールの腕前を持つ、「耳が聞こえず、口の聞けない、盲目の子供」である救世主を描いたピート・タウンゼントの悪名高きロック・オペラ『トミー』を1969年に初めて公衆の面前で披露した時のことをはっきりと覚えている。

「俺たちがステージで最初に演奏した時、誰もが座り込んでしまったのを覚えているよ」と、伝説のボーカリストは、電話でサセックスの自宅から笑う。「俺たちは『おや、・・こいつは悪い兆候だぞ』って思ったよ。俺たちが始めても、みんな全員、床に座っていた。もちろん、1時間は止まらないから、みんなはパラパラと曲の合間に拍手をしていた」「それまでもらっていた普通の反応とはかなり違うリアクションだったけど、終わりの頃にはどっと湧いたんだ。そのときに初めて、これは本当に、まさしく、特別なものなんだ、ってわかったんだよ」

ダルトリーは、ソロとしてのキャリアを望んだことは全くないが、ザ・フーが中断している時には、準備を整え、歌う必要があるのだと言う。『トミー』の完全上演は当初、ティ−ンエイジ・キャンサー・トラストのためのロイヤル・アルバート・ホールでの一夜限りのパフォーマンスの筈だったが、結局、昨年はイギリス、アメリカ、カナダへと、次々とツアーを行なった。売り上げ2000万枚、グラミー賞殿堂入りである『トミー』とは長いこと一緒に過ごしてきたが、ダルトリーが飽きることは決してないだろう。
「これまでお荷物になったことなんてないよ」と彼は力説する。「これまでは許されなかったんだ。いつだってその性質上、驚くほどトゲトゲしいものだったんだよ。つまりね、最近では三重苦の差別用語を口にすることすら許されないんだ」「政治的にどれほど不適切だっていうんだい?」

「昔から俺は、 『トミー』の物語はおじさんやいとこがいる奴の話じゃないと思ってた。あれは俺たちみんなのことなんだ。俺たちはみんな『トミー』さ。『トミー』の中にあるキャラクターは、人間の条件の一部の単なる比喩で、 それは人生において、精神性を確立するために通り抜けなくてはならないトラウマなんだよ」それでおそらく40年以上にも渡って『トミー』が高い評価を受けてきたことの説明がつく。1969年にリリースされたときも称賛されたが、6年後に再びジャック・ニコルソンや、オリバー・リード、アン・マーガレット、ティナ・ターナー、エリック・クラプトンと共に、ダルトリーをトミーとして主役に抜擢し、故ケン・ラッセルの映画版が6年後に再びデビューを飾ったのだ。

「本当に素晴らしい年月だったよ」と、ダルトリーは思い起こす。 アルバムから映画までは数年あったろうと思うけど、その間に俺たちは『ライブ・アット・リーズ』『フーズ・ネクスト』『四重人格』といった影響力のあるアルバムを製作して、それから映画が出たのを忘れちゃいけない。俺たちの人生で驚くほどクリエイティブな時期だったね」

『トミー』はザ・フーが最後の細身のモッズのネクタイを脱ぎ捨てた頃に発表された。タウンゼントは彼の導師、ミーハー・ババに影響を受け、作品にはもっと精神的なテーマが反映された。彼はその後、バンドにもこの見方を取り入れた。

「昔から俺は、ピートのアイディアを完全に支持していたよ」とダルトリーは証言する。「その中に潜む狂気が好きだったね。あいつは俺に『感覚を通してしか物事を感じられない人生を送らなくちゃいけないのを想像してみろ』という言い方をしたんだ。そしてそれは、俺にとって、音楽がそうなのさ」

「天才的なアイディアだと思ったよ。それから俺たちはそれを三重苦を経験しているこの少年に変えた。それは基本的に俺たちの精神に常に起こっている事だし、人生の感覚を通じて進化しているんだ。だから俺は夢中になったよ。ジョン(エントウィッスル、ベース)はもっとヘヴィメタルな男だ。あいつはもっとヘヴィな感じのロックが好きだった、あいつの曲を聴けばわかるだろう。だからあいつは、そのことについてはちょっと曖昧な態度だったけど、でも同様に、あいつは素晴らしい演奏をした。素晴らしくも実験的な日々だったね」

バンドの4作目のアルバム『トミー』は、6ヶ月かかってレコーディングされたが、一方彼らのLP第一弾である1965年の『マイ・ジェネレーション』は午後一日で完成された。ダルトリーは『トミー』がクラシック音楽のロック版であることから、色褪せていないと感じている。それはパフォーマーとしての彼を変えた組曲でもあるのだ。

「俺の運命を決めたんだよ」と彼は語る。「聞けばわかるさ、『マイ・ジェネレーション』や『恋のピンチ・ヒッター』や、そういった他の曲までは、ザ・フーの中で俺はどうなのか分かる。だが、キース・ムーンと喧嘩してバンドを追い出された時期があってね。自分のバンドなのに、追い出されたんだぜ」

「執行猶予付きで戻されてからというもの、『リリーのおもかげ』や『アイム・ア・ボーイ』、『ハッピー・ジャック』みたいな曲を録音し始めたけど、その前は自分の声がどうなってるのか聞こえてたのに、聞いても、もう分からなくなっている。『トミー』はそれを取り戻したのさ」

オーストラリア・トミー公演の次にダルトリーは、バンドの亡きドラマー、ムーンの映画の脚本を終わらせたいと願っている。

「みんなが考えるようにはならないよ。『キャリー・オン・キース(おちゃらけキース)』にはならないだろうね。

彼は、ザ・フーとしてタウンゼントと再びチームを組み、『四重人格』公演を上演する可能性も視野にいれている。相変わらず、バンド自体のルールに従うバンドなのだ。

「うん、それこそ、ザ・フーさ」とダルトリーは笑う。「来週は俺たち、会議をするんだ。ピートは耳に問題を抱えているし、いくつか変更があるだろうけど、何かするつもりだ。何かはまだ分からないけどね。もう一度言うけど、改革の時期なのさ。だからまあ見守っててくれよ」

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